登記情報提供サービスの使い方を一度覚えれば、登記簿も公図も法務局へ行かずに取れるのではないか。そう考えて調べ始めたものの、「証明書とは何が違うのか」「土日に公図が取れなかった」「古い公図はどこにあるのか」とつまずく方は少なくありません。
結論から申し上げます。登記の内容と公図・図面の「確認」は、登記情報提供サービスでほぼオンライン完結できます。料金も窓口の証明書より安く、全部事項は1件330円、公図は1件360円です。一方で、提出用の「証明書」が必要な場面、和紙公図や閉鎖された古い登記簿、登記申請書などの附属書類、そして境界や越境の実況は、今もオンラインでは完結しません。
本記事では、私たち鑑定士が毎回の案件で使っている立場から、オンラインで取れる資料と窓口・現地でしか取れない資料を仕分けし、取得手順とコストを比較します。当事務所の調査フローの線引きもお示しします。
登記情報提供サービスで取れるもの・取れないもの
取得できる情報と料金の比較
登記情報提供サービスは、一般財団法人民事法務協会が「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」に基づいて運営する有料サービスです。登記所のデータをPDFで画面に表示し、その場で保存できます。
似た仕組みに、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」から証明書を請求し、郵送または窓口で受け取る方法があります。3つの取得方法の料金を並べると次のとおりです。
| 取得する情報 | 登記情報提供サービス | オンライン請求(郵送) | 窓口・郵送の書面請求 |
|---|---|---|---|
| 登記事項(全部事項) | 330円 | 520円 | 600円 |
| 地図(公図) | 360円 | 470円 | 500円 |
| 図面(地積測量図・建物図面など) | 360円 | 470円 | 500円 |
登記情報提供サービスの料金は民事法務協会「初めての方はこちら」の利用料金表、証明書の手数料は法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日施行分)によります。オンライン請求で最寄りの登記所の窓口受取を選ぶと、登記事項証明書は490円、地図等の証明書は440円です。このほか、所有者の氏名・住所だけを確認する「所有者事項」は140円で取得できます。
証明書ではないという最大の違い
料金が安い代わりに、登記情報提供サービスのPDFには登記官の認証文も公印もありません。民事法務協会自身が「印刷しても証明書にはならない」と案内しています。
つまり、内容の確認には十分でも、金融機関や裁判所、役所への提出書類として「登記事項証明書の原本」を求められる場面では使えません。私たち鑑定士の実務では、評価の前提となる権利関係・地積・地目の確認は登記情報で行い、依頼者から証明書の添付を求められた案件に限ってオンライン請求で証明書を取り寄せる、という使い分けをしています。
利用時間と「公図は平日のみ」の落とし穴
利用時間は、平日が午前8時30分から午後11時まで、土日祝日が午前8時30分から午後6時までです。ただし、地図と図面の情報だけは平日の午前8時30分から午後9時までに限られます。
週末に登記簿に続けて公図を取ろうとして取れない、というのはよくあるつまずきです。週明けに資料を揃えたい案件では、金曜日の夜9時までに公図と図面を取り終えておくと段取りが崩れません。
公図をオンラインで取得する方法と注意点
住所ではなく地番で請求する
不動産登記情報は、住居表示(郵便が届く住所)ではなく「地番」や「家屋番号」で請求する仕組みです。住居表示が実施されている地域では、住所と地番が一致しないのが普通です。
地番が分からない場合は、登記情報提供サービスの「地番検索サービス」(住宅地図上で住居表示からおおよその地番を調べられる無料機能。提供エリアは順次拡大中)を使うか、管轄の法務局に電話で照会します。権利証や固定資産税の課税明細書が手元にあれば、そこに記載された地番を使うのが最も確実です。
公図の位置と形状は「おおよそ」と心得る
公図には、不動産登記法14条1項の「地図」(測量に基づく精度の高い図面)と、地図が整備されるまでの間これに代わる「地図に準ずる図面」の2種類があります。後者は明治期の旧土地台帳附属地図に由来するものも多く、筆の並びや隣接関係を知るには役立ちますが、距離や形状まで正確とは限りません。
なお、法務省は登記所備付地図のデータを加工可能な「地図XML」形式でG空間情報センターから無料公開しています(令和8年4月15日に令和8年2月時点のデータへ更新。更新は年1回程度)。便利ですが、法務省は「地図証明書・図面証明書に代替するものではない」と明記しています。
当事務所では、公図で筆の並びを確認したうえで、対象地の位置を地理院地図などで別途特定するようにしています。以前、町丁目の街区を代表する座標をそのまま対象地の位置として使いかけたところ、実際の土地から70m以上ずれていたことがありました。長い街区では、代表点と個々の土地の位置がそれだけ離れることがあるのです。
和紙公図・閉鎖登記簿はオンラインで取れない
コンピュータ化される前の古い資料は、オンラインでは取得できないものがあります。代表例が「和紙公図」(和紙で作られた旧土地台帳附属地図など、閉鎖された地図に準ずる図面)です。たとえば横浜地方法務局は、電子化した和紙公図について、登記情報提供サービスやオンライン交付請求では利用できず、写しの交付や閲覧は登記所で扱う旨を案内しています。
コンピュータ化以前の閉鎖登記簿や旧土地台帳も同様で、管轄の登記所に窓口か郵送で請求します。分筆・合筆の経緯や、昔の地目を遡って確認する必要がある案件では、この取得に数日から1週間程度を見込んでおくと安全です。
窓口・現地でしか確認できない資料
登記申請書などの附属書類の閲覧
登記の際に提出された申請書や添付書面(登記簿の附属書類)は、管轄の登記所で閲覧する資料です。令和5年4月1日施行の改正不動産登記法121条により、地積測量図などの図面は誰でも閲覧でき、図面以外の附属書類は「正当な理由」がある場合に、その理由がある部分に限って閲覧できる仕組みになりました。
境界の経緯や過去の分筆の理由を確かめたい場面では、この閲覧が手がかりになります。どの場面で閲覧が認められるかの法的判断は、司法書士・弁護士にご確認ください。
境界標・越境・私道の実況は現地で
オンラインで揃うのは、あくまで「登記上の情報」です。境界標が実際に入っているか、ブロック塀や庇が隣地に越境していないか、前面の私道がどのように使われているかは、現地に行かなければ分かりません。
不動産鑑定評価基準(総論第8章第3節「対象不動産の確認」)は、対象不動産の物的確認と権利の態様の確認を求めており、物的確認は実地調査によって行うこととしています。登記情報と公図は、その現地確認を効率よく行うための「事前資料」と位置づけるのが正しい使い方です。
想定されるケース:戸建1件の資料取得コスト
前提
前面道路が2筆の私道である戸建1件を想定します。必要な資料は、土地・建物・私道2筆の登記事項4件と、公図・地積測量図・建物図面の3点です。窓口へ行く場合は、往復と待ち時間で2時間かかると仮定します。
| 取得方法 | 手数料の合計 | 手元に届くまで | 移動時間 |
|---|---|---|---|
| 登記情報提供サービス | 2,400円 | 即時 | なし |
| オンライン請求(郵送) | 3,490円 | 数日 | なし |
| 窓口の書面請求 | 3,900円 | 当日 | 約2時間 |
計算の内訳は、登記情報提供サービスが330円×4件+360円×3点、オンライン請求が520円×4件+470円×3点、窓口が600円×4件+500円×3点です。
差が大きいのは手数料より時間
手数料の差は1,500円程度ですが、窓口へ行く場合の2時間は、時給5,000円で換算すると1万円に相当します。月に10件の調査があれば、移動だけで年240時間です。
調査の効率化で効くのは、手数料の節約よりも「窓口へ行く回数を減らすこと」です。取得をオンラインに寄せ、窓口へ行くのは和紙公図や附属書類が必要な案件だけ、と決めておくのが現実的な線引きです。
登記情報提供サービスを起点にした当事務所の調査フロー
オンラインに寄せた工程
当事務所では、受任後の最初の作業として、登記情報提供サービスで登記事項・公図・図面を一括で取得し、案件フォルダに保存しています。続けて、取得したPDFを生成AIに読ませ、所有者・地積・地目・抵当権などの一覧表を下書きさせます。この工程の具体的な進め方は役所調査・資料整理はAIでどこまで楽になるか?で紹介しています。
都市計画やハザード情報も、国や自治体が公開しているデータで多くを確認できるようになりました。公的データのAPI活用は不動産情報ライブラリAPIの実務活用にまとめています。
人が確認する工程
一方で、次の3つは意図的に人の確認として残しています。
- AIが作った登記の一覧表を、元のPDFと1項目ずつ突き合わせる
- 公図の筆の並びと、地図上で特定した対象地の位置が一致しているかを照合する
- 境界標・越境・接道の状況を、現地で写真と測定により確かめる
オンライン化したのは「集める」「並べる」工程で、「確かめる」「判断する」工程は人に残す。この線引きを守ることで、調査のスピードと正確さを両立できると考えています。
まとめ
登記情報提供サービスを使えば、登記の内容と公図・図面の確認は、窓口へ行かずにオンラインでほぼ完結できます。
要点を振り返ります。
- 料金は全部事項330円、公図・図面360円で、証明書の窓口請求より安い
- PDFは証明書ではないため、提出用はオンライン請求で証明書を取り寄せる
- 公図と図面の取得は平日午後9時までで、土日祝日は取れない
- 請求は住所ではなく地番で行い、公図の位置と形状は「おおよそ」と心得る
- 和紙公図・閉鎖登記簿・附属書類の閲覧は登記所で、境界や越境の実況は現地で確認する
現地調査や役所調査に追われている鑑定士・不動産実務者の方は、まず登記と公図の取得を登記情報提供サービスに寄せ、窓口へ行く案件を絞るところから始めてください。
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