はじめに
「AIを使ってみたが、返ってくる答えが浅くて使えない」
そう感じて手が止まっている方は多いのではないでしょうか。実は、出力の質の差の多くはAIの性能差ではなく、プロンプト(AIへの指示文:AIに何をしてほしいかを伝える文章)の差です。同じAIでも、指示の設計次第で成果物はまるで変わります。
本記事では、当社が鑑定業務・事務所運営で日々AIを使う中で型化してきた、業務用プロンプトの設計4原則をご説明します。呪文のような特殊なテクニックではなく、実は「新人スタッフへの仕事の頼み方」とほとんど同じ話です。
第1章: プロンプトは「新人への業務指示」と考える
優秀だが事務所に来たばかりの新人を思い浮かべてください。「これ、いい感じにまとめておいて」と資料を渡せば、的外れな成果物が返ってきます。背景を説明し、完成形の見本を見せ、仕事を区切って渡し、上がってきたものを確認して直す——それで初めて機能します。
AIへの指示もまったく同じです。AIは知識こそ豊富ですが、あなたの事務所の事情・案件の背景・成果物の好みを何も知りません。この前提に立つと、次の4原則は自然に導かれます。
第2章: 設計4原則
原則1: 役割と前提を渡す
「あなたは士業事務所の事務スタッフです」「この文書は依頼者向けの説明資料です」のように、立場と文脈を最初に渡します。同じ要約でも、専門家向けか一般の依頼者向けかで、適切な語彙も詳しさも変わるからです。
原則2: 成果物の形を見本で示す
「表にして」ではなく「日付・項目・金額の3列の表にして」。可能なら見本を1行分書いて見せます。形式を言葉で説明するより、見本を1つ示す方が正確に伝わります。
原則3: 大きい仕事は分割する
「この案件の報告書を書いて」のような大きな指示は失敗します。「まず資料の要点を一覧化→次に構成案→承認後に本文」と工程を区切ると、各段階で軌道修正でき、手戻りが激減します。
原則4: 出力を検証して繰り返す
一発で完成品を求めず、出力を確認して「ここを直して」と往復する前提で設計します。数値や固有名詞は原資料と突合し、推測で埋めさせない指示(「分からない箇所は空欄にして『要確認』と書く」)を添えます。検証してはじめて成果物です。
第3章: ビフォーアフター例 — 文書要約の指示
一般的な文書要約を例に、4原則を適用してみます。
ビフォー
この報告書を要約して。
これでは、長さも読者も観点も指定がなく、当たり障りのない要約が返ってきます。
アフター
あなたは士業事務所のスタッフです。添付の調査報告書を、この案件を知らない依頼者に渡す前提で要約してください。 形式:「結論(2行)」「根拠(箇条書き3点)」「今後の対応(箇条書き2点)」の3見出し。 数値と日付は本文から正確に転記し、報告書に書かれていないことは推測で補わないでください。不明な点は「要確認」と明記してください。
役割と読者(原則1)、見出し構成という形の指定(原則2)、推測禁止と要確認の明記(原則4)が入っています。さらに長い文書なら「まず章ごとの要点を出して」と分割(原則3)から入ります。この違いだけで、出力は「読める要約」から「そのまま叩き台にできる要約」に変わります。
第4章: よくある失敗
- 一度で完璧を求める:初回出力への失望で使うのをやめてしまうケースです。往復して育てるのが前提です
- 背景を渡さずに専門的な出力を期待する:AIはあなたの案件を知りません。前提を渡した分だけ精度が上がります
- 検証を省略する:もっともらしい誤りが混ざるのが生成AIの性質です。数値・固有名詞・引用は必ず原資料に当たります
- うまくいった指示を使い捨てる:機能したプロンプトは事務所の資産です。型として保存し、改善を重ねます。当社でも業務別のプロンプトの型を整備し、導入支援先に合わせて個別化しています
なお、こうした指示文の設計は、チャット型AIでもClaude Codeのようなエージェント型でも共通の土台になります。エージェント型での頼み方はClaude Code実務活用の実例もあわせてご覧ください。
まとめ
- プロンプトは「新人への業務指示」と同じで、①役割と前提を渡す ②成果物の形を見本で示す ③大きい仕事は分割する ④出力を検証して繰り返す、の4原則で設計します
- 「推測で補わない・不明は要確認と書かせる」という一文が、業務利用では特に重要です
- 機能したプロンプトは使い捨てず、事務所の型として蓄積します
自事務所の業務に合わせたプロンプトの型づくりからご支援できます。まずは無料相談へお気軽にどうぞ。無料資料「鑑定士のためのAI活用入門」もこちらからダウンロードいただけます。
