はじめに
「ChatGPTで鑑定評価書、書けるんじゃない?」
そう聞かれることが増えました。結論から言うと、 鑑定評価額の最終判断をAIに委ねることはできません 。一方で、補助業務での活用余地は大きく、月数十時間の削減も現実的です。
本記事では、何にAIを使ってよいか・使ってはいけないかを、実務の文脈で整理します。
第1章: 鑑定士の独占業務とAIの境界線
鑑定評価額の判断は鑑定士の独占業務
法律で定められている通り、鑑定評価業務は鑑定士の独占業務です。AIに「鑑定評価額を出力させる」ことは、この独占業務をAIに委ねることになり、不適切です。
では何ができるのか
鑑定評価書の作成プロセスは、おおむね以下のステップに分けられます。
- 依頼内容の確認
- 物件調査・市場調査
- 取引事例の収集・整理
- 評価手法の適用(原価法・取引事例比較法・収益還元法)
- 試算価格の調整・最終評価額の決定
- 評価書の文章化
- レビュー・納品
このうち、 2〜3、6 はAIによる効率化の余地が大きい領域です。 4〜5 は鑑定士の独占業務領域であり、AIに委ねられません。
第2章: 使ってよい3つの活用シーン
シーン1: 取引事例の要約・整理
レインズや国交省の取引事例情報から得たデータを、AIに要約させて表形式に整理する作業は、品質を落とさずに大幅な時短が可能です。
シーン2: 地域分析の下書き
国勢調査・経済センサス・公示地価等のオープンデータを基に、地域分析の下書きをAIに作らせる活用法です。最終的なアウトプットは鑑定士がレビュー・補正します。
シーン3: 評価書の文章整形
評価結論や根拠説明を箇条書きで書き出し、AIに「鑑定評価書らしい文体で整形して」と指示する活用法です。「書く」のは鑑定士、「整える」のはAI、という役割分担になります。
第3章: 使ってはいけないこと
機密情報の入力(特に依頼者特定情報)
ChatGPT無料版・Plus版での入力
これらの一般向けプランでは、入力データが学習に使われる可能性があります。依頼者名・物件特定情報など、 機密情報を入力するのは避ける べきです。法人プラン(学習されない設定)の活用、または機密情報を抽象化したうえでの利用が現実的です。
鑑定評価額の最終判断
「ChatGPTで〇〇円と出ました」を採用することは、鑑定士の独占業務を放棄することになります。AIの出力はあくまで「参考」であり、最終判断は鑑定士が責任をもって行います。
法令解釈の依頼
鑑定評価基準・関連法令の解釈は、AIの出力を鵜呑みにすると重大な誤りにつながります。法令引用は必ず一次資料を確認しましょう。
まとめ
AIは鑑定実務の補助として強力なツールです。一方で、鑑定士の独占業務領域に踏み込ませない設計が重要です。
当事務所では、AI活用コンサルとして「事務所別カスタムプロンプト集」「機密情報の取扱いガイド」「業務別の活用ガイド」を作成しています。AI導入を本格化したい方は、ぜひご相談ください。
Service
AI活用コンサルティング
ChatGPT・Claude・Gemini等の生成AIを鑑定業務に導入。現状分析からツール選定、所内ルール整備まで、実務に即した活用方法をご提案します。
