「検索順位は落ちていないのに、サイトからの問い合わせだけが減った」。士業の先生からこの相談を受ける機会が、この1年で増えています。
理由の多くは同じところにあります。利用者が検索結果の青いリンクをクリックする前に、ChatGPTやGoogleのAIによる要約が答えを返してしまうからです。答えを返すとき、AIはどこかのサイトの記述を根拠として引用します。引用元に選ばれれば認知は残り、選ばれなければ順位が何位であろうと存在しないのと同じになります。
この「AIの回答に引用されるための最適化」を、LLMO(Large Language Model Optimization=大規模言語モデル最適化)と呼びます。AIO、GEOといった呼び方もありますが、指しているものはほぼ同じです。本記事では、私たち鑑定士が自社サイト群を運営しながら実際に手を入れている観点に絞って、士業事務所が今すぐ着手できる5つのことを整理します。新しいツールを買う必要は一つもありません。
AI検索は「順位」ではなく「引用」を奪い合う場になった
従来SEOとLLMOは目的地が違う
従来のSEOは、検索結果ページ(SERP)の上位に自社ページを表示させ、クリックを取りにいく施策でした。評価される単位は「ページ」です。
一方のLLMOは、AIが生成する回答文の中に自社の記述と社名が現れることを狙います。評価される単位は「ページ」ではなく、回答の根拠として切り出せる「段落」や「一文」です。ここが決定的な違いです。AIは記事全体を紹介してくれません。問いに対応する部分だけを抜き出して使います。
| 観点 | 従来のSEO | LLMO |
|---|---|---|
| 目的地 | 検索結果の上位表示 | AI回答内での引用・言及 |
| 評価単位 | ページ単位 | 段落・一文単位 |
| 成果の形 | クリックと流入 | 指名検索と直接の問い合わせ |
士業にとってLLMOは不利な戦いではない
ここは断言します。LLMOは、規模の小さい士業事務所にとってむしろ有利な土俵です。
AIが引用先を選ぶとき、重視されるのは「その分野の実務を実際にやっている者が書いた、確認可能な記述か」という点です。一般的な情報をまとめ直しただけの大手メディア記事より、条文と実務手順を具体的に書いた個人事務所の1ページのほうが引用されることは、珍しくありません。逆に言えば、実務を持たない事務所はこの土俵では戦えません。
なお、従来SEOでの上位表示はLLMOの前提条件として今も有効です。AIの多くは検索インデックスを参照して回答を組み立てるため、そもそも検索で見つからないページは引用対象にすら入りません。地域キーワードの設計については士業・鑑定士事務所のSEO対策 — 地域キーワード選定の実務で解説しています。
今すぐやること①②:AIが切り出せる構造にする
①見出しを「問い」の形に書き換える
AIは、利用者の質問文と意味的に近い見出しを手がかりに、回答に使う箇所を探します。ですから見出しは、名詞の羅列ではなく利用者が実際に打ち込む問いの形にします。
- 変更前:「鑑定評価の費用」
- 変更後:「不動産鑑定の費用はいくらかかるのか?」
そして見出しの直後の1〜2文で、必ず結論を書き切ります。「結論は記事の最後に」という構成は、AI検索とは相性が最悪です。抜き出される候補が見出し直下の段落に集中するためです。
②定義文を段落の先頭に置く
専門用語は、初出の段落の冒頭で「Aとは、Bです」の形で言い切ります。
たとえば「継続賃料とは、既存の賃貸借契約が続いている状態で、賃料改定のために求める賃料です」。この一文はそのまま引用可能な単位になります。同じ内容でも「継続賃料については、契約が続いているという事情を踏まえて考える必要があり…」と書き始めると、切り出せる形になりません。
書き換えの目安
自分の記事から任意の1段落だけをコピーして、単独で読んで意味が通るか確かめてください。前の段落を読まないと分からない段落は、AIにも引用されません。
今すぐやること③④:一次情報と書き手を明示する
③自社でしか出せない数字を本文に置く
AIは、どこにでも書いてある一般論よりも、出所が特定できる固有の情報を好んで引用します。士業事務所にとっての一次情報とは、自分の実務から出た数字と手順です。
私たちの場合、自社サイト群の運営で計測している数字(記事1本あたりの制作工数、AI下書きを使った場合の短縮幅など)を記事内に具体的に書いています。業界統計を引くときも、機関名・調査名・時点を本文中に明記します。「国土交通省の令和7年1月1日時点の登録状況によれば」と書けば、AIはその一文ごと引用できます。「近年増加傾向にあるとされています」では、引用しようがありません。
④誰が書いたのかを本文とページ構造の両方で示す
AIは、書き手の専門性を判断できないコンテンツの引用を避ける傾向があります。プロフィールページを別に用意するだけでは足りません。記事本文の中で「不動産鑑定士として実務で扱っている立場から」と一人称で立場を示し、あわせてページ側に著者情報の構造化データ(JSON-LD)を持たせます。
想定されるケースで考えます。ある税理士事務所が「相続 不動産評価」で従来から10位前後に表示されていたとします。記事は正しいのですが、見出しが名詞のみ、結論は末尾、数値はすべて出典なしの一般論、著者名の記載なし。この状態ではAI回答での引用は期待できません。ここで見出しを問い形に直し、各見出し直下に結論を置き、数値に出典を付け、冒頭に執筆者の資格と立場を書き加える。ページを増やさず既存記事を改稿するだけで、引用の候補に入る条件は整います。
なお、AIが生成した文章をそのまま載せると、この④は逆効果になります。誤りの混入を防ぐ手順はハルシネーションとは?士業業務でAIの誤りを防ぐ検証の型4点にまとめています。
今すぐやること⑤:AIクローラーを自分で締め出していないか確認する
robots.txt の設定を見る
ここが最も見落とされ、かつ最も影響が大きい項目です。制作会社が設定したまま、AI系クローラーを一律で拒否しているサイトが実際にあります。この状態では、記事をいくら改善しても引用対象になりません。
自社サイトのURLの末尾に /robots.txt を付けてブラウザで開き、以下のような記述が無いか確認してください。
| クローラー名 | 主な用途 |
|---|---|
| GPTBot | ChatGPTの学習・検索 |
| ClaudeBot | Claudeの学習・検索 |
| PerplexityBot | Perplexityの検索 |
| Google-Extended | Geminiでの利用可否の制御 |
これらに対して Disallow: / が指定されていれば、意図的な判断でない限り解除を検討します。判断は事務所の方針次第ですが、少なくとも「知らないうちにそうなっていた」状態は避けるべきです。
海外IP制限とレンタルサーバーの初期設定
もう一つの落とし穴が、レンタルサーバーの管理画面にある海外アクセス制限機能です。攻撃対策として有効な機能ですが、AI系クローラーの多くは海外のIPアドレスから来ます。ここで弾かれていれば robots.txt の記述に関係なく到達できません。サーバーの管理画面でこの設定を確認し、必要ならクローラーのIPレンジを除外します。
効果はどう測るか
引用されているかを直接確かめる
LLMOの効果測定は、まだ確立した指標がありません。現時点で現実的なのは、次の2つを組み合わせる方法です。
1つは手動での確認です。自分の事務所に依頼が来るときの典型的な質問文を10個ほど決め、月に一度、ChatGPTなどに同じ問いを投げて自社サイトが引用されるかを記録します。地味ですが、これが最も確実です。
もう1つはアクセス解析です。参照元にAIサービスのドメインが現れているかを見ます。件数自体は多くありませんが、この経路からの訪問は「AIの回答で名前を見て、わざわざ調べてきた人」であり、問い合わせにつながる密度が高いのが特徴です。
数字が動くまでの時間感覚
改稿の効果がAI側の回答に反映されるまでには、一定の時間がかかります。1〜2週間で結論を出さず、四半期単位で見てください。逆に言えば、記事を量産するより、既存の主要記事10本を上記①〜④の観点で改稿するほうが、投じた時間に対する効果は大きくなります。書き方そのものの型は士業ブログの書き方 — 検索で見つかる記事の型と続けるコツで扱っています。
まとめ
LLMO対策として特別な技術は必要ありません。実務を持つ士業が、自分の言葉で、AIが切り出せる構造で書く。突き詰めればそれだけです。
要点を振り返ります。
- LLMOは検索順位ではなくAI回答内での引用を狙う施策で、評価単位は段落・一文
- 見出しは利用者が打ち込む問いの形にし、直後の1〜2文で結論を言い切る
- 専門用語は「Aとは、Bです」の形で段落冒頭に定義を置く
- 自社の実務から出た数字と、機関名・調査名・時点を明記した出典を本文に置く
- 記事本文とページの構造化データの両方で、書き手の資格と立場を示す
- robots.txt のAI系クローラー拒否と、サーバーの海外IP制限を必ず確認する
HPからの集客を伸ばしたい士業事務所の代表の方は、まず新規記事の執筆より、robots.txt の確認と主要記事の改稿から着手することをおすすめします。今日中に終わる作業から効果が出る余地が残っている、というのが現在の状況です。
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